白鯨伝説の概要
不運な大作
BSの衛星アニメ劇場内で1997年から1999年にかけて放送されていたテレビアニメシリーズです。
放送時には制作会社が倒産したことにより一度18話で打ち切られてしまいました。
その後手塚プロダクションに権利が移り、26話で終了。
構想では全39話のはずでした。
逼迫した制作状況により幾度も総集編や再放送で間を伸ばし続けたことや、制作会社が倒産してしまったことなどが、この素晴らしい作品が名声を得ず埋もれてしまった原因でしょう。
不運により目立たない作品となってしまった『白鯨伝説』ですが、さすが出崎統監督がアイディアを温めてきた力作ということで、ストーリーや絵のクオリティは間違いありません。
当時の衛星アニメ劇場では『鋼鉄天使くるみ』や『カードキャプターさくら』なども放送されており、僕をアニメ好きにする原因となりました。
この『白鯨伝説』例に漏れず僕を魅了し、今でも最も好きなアニメです。
小説『白鯨』との共通点
世界の10大小説のひとつであるハーマン・メルヴィル作『白鯨』をモチーフにしています。
ナンタケットという場所が出てくるところや、
主要人物であるエイハブ船長は小説『白鯨』の主人公であるエイハブと全く一緒です。
片足を白鯨に食いちぎられて片足が義足になっているのも小説の『白鯨』と一緒で、乗組員が個性的で多様な人種であることも小説と似ているところです。
※ちなみに小説『白鯨』のエイハブの名前の元ネタは旧約聖書のエイハブ(アハブ)からです。
モチーフとなった小説の白鯨はこちらです。
様々な出版社から翻訳が出ていますが、こちらが読みやすいです。
ストーリー
4701年の未来。
人類は広く宇宙に生活圏を広げ、宇宙にはボロクズとなり鯨と呼ばれる廃宇宙船が漂っています。
その鯨を回収して部品や金品や武器を売りさばいている男たちは鯨捕りと呼ばれています。
その鯨捕りたちのなかで最も名を挙げているのが宇宙船「レディ・ウィスカー号」に乗るエイハブ船長一味でした。
そのエイハブ船長たちの船にもぐりこんだ主人公の少年ラッキー・ラックは、与えられた試練に挑戦しエイハブ鯨捕りカンパニーの一員となります。
しかしラッキーは自身を少年と偽っていた女の子であり、真の目的はエイハブに故郷である惑星モアドの救済を依頼することでした。
ラッキーの故郷『惑星モアド』は惑星破壊兵器「白鯨」の実験場に指定され、人々は強制退去政策によって虐げられておりラッキーの兄であるシローがリーダーとなって連邦軍へレジスタンス活動を行っていたのでした。
かつてその「白鯨」により片足と片眼を失ったエイハブは因縁の相手である「白鯨」への復讐の一環としてラッキーの依頼を受け、一同は惑星モアドに向かったのでした。
主要登場人物
エイハブ船長
35歳。漂流した宇宙船=鯨を捕獲・転売する「エイハブ鯨捕りグループ」の社長。
勇猛果敢という言葉がよく似合います。
非常に男臭く力と行動でチームを引っ張るタイプのカリスマ的リーダーです。
かつて「白鯨」に片目と片足を奪われ、それ以来ずっと白鯨の跡を追っています。
声は大塚明夫さんです。
ラッキー・ラック
14歳。金髪ポニテのかわいい少年、と思いきや物語の序盤でわかりますが実は女の子でした。本名はサチコ・トキサダ。
故郷である惑星モアドの救済をエイハブ船長に依頼するためにレディ・ウィスカー号に乗り込む。
アンドロイドであるデュウに女の子であることをばらされたシーンは、何かを僕に植え付けました。
ここを書くにあたって「ラッキーが女の子なんてネタバレしていいんか?」と思いましたが、大丈夫です。
だって初めからどう見たって女の子にしか見えませんから(笑)
声は水谷優子さんです。
デュウ
ラッキーの裸を透視し、ラッキーが女の子であることを暴いたアンドロイド(人造人間)。
僕の性癖を捻じ曲げる原因を作った張本人(恩人)でもあります。
宇宙を漂流していたところエイハブ船長に回収されるが、自身の名前以外の記憶の一切を失っていました。
この物語の一番のキーパーソンです。声は関俊彦さんです。
見てわかる通り、声優陣が豪華ですねえ。
他にも紹介したい人がたくさんいますが、アニメを観てからのお楽しみです。
主要人物を紹介しましたが、白鯨伝説はむしろ脇役がみんな素晴らしいんです。
味方と敵含めてみんな魅力的なんです。
白鯨伝説の好きなところ
おっさんがかっこいい
エイハブ船長含め、エイハブ鯨捕りグループの乗組員全員キャラが濃くて愛らしいです。
めちゃめちゃ男臭い連中なのに可愛いんです。
ステキなおっさんアニメです。
OPテーマの「風とゆく」がかっこいい
これほど冒険活劇によく合うテーマもなかなかないと思います。
曲だけじゃなくてOP中のアニメーションも出崎演出バリバリでめちゃくちゃかっこいいです。
EDテーマの「約束」が美しい
作中に登場する惑星モアドの歌姫であり女性型アンドロイドであるセイラ(声は篠原恵美さん)が歌っています。
遠くに離れた恋人を長年待ち続けるセイラの愛を歌った美しい曲です。
いまでも大好きな感動曲です。
SF要素
宇宙にいくときのギミックがかっこいい。
宇宙に生身で出ていくときにガスを浴びて体をコーティングしたり、酸素を取り込むために口に咥える部品もかっこいい。
巨大な破壊兵器である「白鯨」や宇宙船の描写はとても美しいです。
出崎監督の演出
止め絵・繰り返しショット(3回パン)・入射光など、出崎監督の技術がふんだんに取り入れられています。
基本的にめっちゃぬるぬる動くので、見てて飽きません。
最後に:白鯨伝説を観る手段
書いてしまってなんですが、この壮大な物語は僕の文書だけで理解するのは不可能なので、とにかく見てほしいです。
絶対に見て後悔はない名作中の名作です。
今はDVD-BOXが売られていますし、U-NEXTでは全26話が視聴できます。
一生思い出のアニメになると思うので、とってもおすすめです。