みなさんこんにちは。
今日は僕の好きな作家である桜庭一樹さんの本を紹介したいと思います。
直木賞作家であり情熱大陸でも取り上げられた売れっ子作家の桜庭さんですが、Gosickのアニメや私の男の実写映画や伏のアニメ映画などから入った人が多いと思います。
僕は桜庭さんが直木賞を受賞した2008年から桜庭さんの本を読み始めたくちでございますが、今日はそんな僕が上に挙げた作品以外の、おすすめの作品を5作紹介したいと思います。
ちなみに紹介する順番には何の意味もありません。
桜庭一樹さんのおすすめ5作
桜庭一樹さんの小説のうち、個人的に読んですんごく良かったおすすめの本を紹介します。
紹介する順番に意味はありませんし、今回紹介する以外の本もおすすめですよ。
【赤朽葉家の伝説】
2006年刊行
作者の出身地である鳥取県を舞台にしています。
架空の村である紅緑村で製鉄所を営む赤朽葉家の親子3代に渡る物語です。
桜庭一樹さんはマジックリアリズムの巨匠であるコロンビアのノーベル賞作家ガルシア・マルケスの影響を強く受けており、
日常の中に非日常を突然混ぜ合わせるのが得意なのですが、
この作品にもガルシア・マルケスの著書である【百年の孤独】にも似たテイストがちりばめられています。
第一章の主人公である赤朽葉万葉は千里眼の持ち主なのですが、この人物は桜庭さんのお母さんがモデルになっているとのこと。
完全に別の部屋にいながら、桜庭さんのお母さんは、桜庭さんが何をしているのかわかったそうです(笑)
語り部は第三章の主役である赤朽葉瞳子なのですが、この瞳子が赤朽葉家のなぞを解くことになります。
しかしミステリー小説とうたってはおりますが、ミステリー要素はあまり重要ではなく、大事なのはこの作品の世界観だとか没入感だと思います。
桜庭さんも言われているように、ひとつの舞台作品のように世界を作って人物たちを動かしているため、かなり世界観が独特です。
この箱庭の中をいつまでも堪能していたいな、そんな気持ちにさせる作品だと思います。
ちなみに一番物語が濃いのは万葉の娘である赤朽葉毛鞠が主人公の第二章です。
スピンオフの【製鉄天使】も出ており、作者にとっても印象の深いパートだったのだと思います。
赤朽葉家の伝説 創元推理文庫 / 桜庭一樹 サクラバカズキ 【文庫】
【砂糖菓子の弾丸は打ち抜けない】
2004年刊行
はじめ出版された時はライトノベルとして扱われていたためか萌え系の表紙絵だったのですが、
2007年にはシックな柄の単行本として出版され、僕みたいなおじさんでも手に取りやすくなりました。
読んだ後では、萌え絵の表紙も物語とのギャップがあってそれがダマしになっており良いと思いますが、
後者の表紙の方が物語の雰囲気に合っているなという印象です。
この文章からも察せられると思いますが、かなりショッキングな内容となっております。
2006年度にはこのライトノベルがすごいで3位になるなどかなり話題性のある作品でもありました。
僕が改めていいなと思うのは、一見よくありがちな電波系の萌えキャラみたいな登場人物でも、
読み進めていると【そうなった理由】がわかるようになっているところです。
それが良い意味でまたダマしになっており、気持ちよくショッキングに僕を裏切ってくれました。
物語の最後にはタイトルの意味もわかるようになっており、上手いタイトル付けたなーという印象です。
漫画化もされていますが、とても綺麗な絵で、主人公のイメージもぴったりでした。
【少女七竈と七人の可愛そうな大人】
2006年刊行
辻斬りのように男遊びをしたいな、と思った。という主人公七竈の母の一句から始まる物語ですが、
この作品はいわば母の業のために苦しむ娘の話です。
桜庭さんの作品の良さは【いい感じに登場人物がみんな浮世離れしているところ】です。
それをリアリティの欠如と言えばそうなんですが、それは短所ではなくて、むしろ長所であります。
というのも、その世界観だとか浮世離れした登場人物たちを描くという【嘘】が面白いからです。
物語を読むのだから、つまらないけどリアルな物よりも、リアリティは度外視しているけど面白い物を読む方が良いです。
なぜならリアリティを追求するならドキュメンタリーやルポを読めばいいのであって、わざわざ作り話を読む必要はないからです。
この作品も浮世離れした登場人物が出てきます。
主人公の川村七竈(かわむら ななかまど)は芸能事務所にスカウトされるほどのその地域では有名な美少女で、鉄道模型が大好き。
閉鎖的な郊外では飛びぬけた美とは異物であり、そのために七竈は疎外感を覚えます。
そんな七竈を唯一理解しているのが同じく美少年であり親友で鉄道模型好きの桂雪風(かつら ゆきかぜ)なのですが、ふたりの関係がとてもいいのです。
ラストでは僕は感極まって泣いてしまいました。
最後の数ページは何度読み返してもジーンと来てしまします。
【ファミリーポートレイト】
2008年刊行
桜庭さんの作家としての業なのか、物語の特徴として、可愛そうな女の子が出てくるのが鉄板であるような気がします。
この作品も順当にその系譜をたどっておりますが、この話も親によって苦しめられる少女の成長物語です。
でもね、可愛そうな少女の視点で語られる物語でも、少女本人は自分のことをかわいそうとは思っておらず、気高いんですよね。
ダメな母親をひとりの女性として見ているという視点です。
そう思うと、このファミリーポートレイトの主人公であるコマコも、
砂糖菓子の弾丸は打ち抜けないの海野藻屑も、
少女七竈と七人の可愛そうな大人の七竈も、まるで菩薩かな?と思えてきます。
この作品の主人公であるコマコは桜庭さんの作品の主人公の中では比較的ひねくれている方なのですが、
この子も他の子に負けず劣らずキャラ濃いです。
ひとりの作家になった女の子の自叙伝を読んでいるような気になりますが、最後のシーンはカタルシスを感じました。
ファミリーポートレイト (集英社文庫(日本)) [ 桜庭 一樹 ]
【青年のための読書クラブ】
2007年刊行
この作品は他の桜庭さんの作品とは少し経路が違って、かわいそうな女の子は出てきませんし、陰鬱な雰囲気をありません。
名門女子高の読書クラブの100年に渡る歴史が描かれているのですが、僕はこの作品のライトな疾走感が好きです。
第一章の鳥丸紅子恋愛事件は結構笑えました。
読了後、かなり漫画っぽい小説だなと思いましたが、2008年に漫画化されていました。
番外編:エッセイ集
2020年5月現在、桜庭さんは8作エッセイを刊行されているのですが、全部おすすめです。
桜庭さんの小説が面白いのはもちろんなのですが、この人自体も面白い人でかなりキャラが濃いです(笑)
副題がいつも【桜庭一樹読書日記】ということもあり、この人ずっと本読んでます(笑)
かなりの本の虫ですが、読書日記なので書評というわけではなく、堅苦しくなく読めます。
僕は桜庭さんの小説にもはまりましたが、エッセイ集の方が実はハマってしまったという節もあるくらいです(笑)
こんなこと言っては何ですが、マジでへんな人です(笑)
もちろん良い意味で(笑)
ほんとこの人は徹底して食べるようにむしゃむしゃ本を読みます。
小説オタクで出てくる話がとてもマニアック(笑)
小説のプロットの作り方なども図を描いたりしてかなり独特です。
少年になり、本を買うのだ 桜庭一樹読書日記 創元ライブラリ/桜庭一樹
最後に:どの本から読んでも面白い桜庭一樹さん
エッセイの中でもよく書かれているのですが、作者は両性具有と言っている通り、
色んな人物の視点で物語られるばかりか、少女視点の話であっても構成に凝っておりかなり西洋的で男性的な作り方をする面もあります。
暗い雰囲気の作品が多いのですが、後味悪い鬱な感じではなく、薄暗い森のなかに入っていくような没入感を味わえます。
そういう作家に必要な【世界に引き込む力】や【面白い嘘をつく力】というのを桜庭さんはたくさん持っている作家さんなんだなと思います。
何かおすすめの現代作家を探しているのであれば、桜庭一樹さんは絶対におすすめです。
作品のエッセンスとしては共通のものが多いのですが、読書量が膨大なためかなり多彩な作家なので、どれから読んでも良いと思います。
ちなみに僕は【私の男】から読み始めましたが、どれも面白いので何から読んでも良いと思います。